1.治療法の基本理念
(1)アメリカ生まれの治療法
当治療院の治療法は、オステオパシーを基本とした「手技療法」です。オステオパシーとは、病気の原因を骨格のズレやゆがみなどに求め、そうした原因を探し調整することによって症状の改善を目指す治療方法です。筋骨格系や頭蓋骨のズレやゆがみを調整していくカイロプラクティックも同じ考え方に基づいており、当治療院では、痛みのない治療の特長に焦点を当てて「ソフトカイロプラクティック」と呼んでいます。
オステオパシーもカイロプラクティックも、どちらもアメリカで生まれ、120年以上の歴史があります。そして、考え方の基本には、治療の対象となる方の自然治癒力を高めるという目的があります。
また、どちらにも数多くのテクニックが内包され、単一の方法では行いません。また、日々研究・工夫が重ねられているので、使用されるテクニックのバリエーションは数えきれないほどです。
当治療院では、より安全でより効果的な治療を念頭に、特に有効と考えるテクニックを選択して組み合わせ、随時アレンジしながら治療を行っています。
薬や手術に頼らず、筋骨格系を無理のない自然な方法で調整し、主に構造的バランスを整え中枢神経である脳や脊髄の働きを調節します。そして、神経系統を中心に働きかけ、免疫力を高めて自然治癒力を活性化させ、健康の維持や病気の快復に役立つ治療を実践しています．．。
(2)“治りたがる”正常なからだへ
人間のからだには、病気や故障から快復するための力が備わっています。ちょっとした擦り傷や切り傷などが、特に何もせずに治っていく例は、どなたにも経験があると思います。
この力が「自然治癒力」です。
切り傷などに限らず、ぶつけてコブができた、お腹の調子が悪い、などというときにも、からだはこの自然治癒力で治そうとします。
つまり、本来からだは、治りたがっているのです。
しかし、この自然治癒力が何らかの原因で十分に働かないとき、「何となく調子がよくない」という状態を経て、「肩（首）が凝りやすい」「すぐ腰を痛める」など、さまざまな症状となって現れ、病気や怪我が起こりやすい状態に陥っていきます。
当治療院では、筋骨格系や頭蓋骨、仙骨のバランスを診断し、バランスが崩れたために人間のからだが持つ自然治癒力が十分に働かなくなっている部分を探し出して調整し、自然治癒力を最大限に発揮させようとする治療体系です。
(3)対症療法ではなく原因を治療
「腰を痛めた」「寝違えた」「肩が凝る」などの症状が出ると、その部位を治療するのが従来の方法です。痛み止めを飲む、マッサージをする、電気をかけるなどの治療を行うわけですが、それが間違いと言わないまでも、原因がその部位にない場合は症状が改善されないという状況になってしまいます。
からだを形作る筋骨格は、筋膜を通して頭のてっぺんからつま先まで、つながっています。
そして、それぞれは互いに連動し、影響しあっています。腰が痛い原因が、腰そのものにない場合も多いのです。
また原因は、筋骨格自体に原因がある場合と、内臓の負担が筋骨格に影響している場合、ストレスが影響する場合の3通りが考えられます（内臓に腫瘍などの問題がある場合はまた別の手立てが必要になります）。
症状として感じる部位だけを治療しても、原因が違うところにある場合もあり、時間がたつと他の部位に症状が出ることがあり、したがって同じ症状を引き起こしやすくなります。
症状そのものではなく、それを生じさせている原因を探し出して治療することにより、再発の防止にもつながります。また、同じ原因で別な症状が起こっていれば、そちらの症状も同時に治療できます。
よくある例で「腰の痛みを訴えているのになぜ頚椎を調整するのか」と、疑問を訴える方もいらっしゃいます。しかし、たとえ頚堆に痛みがなくても、その腰痛の原因が頚堆にある場合は、調整します。それは、その部位こそが痛みの原因で、そこを調整しなくては本当の回復が望めないからです。
一見、痛みとは関係ないと思うような部位に、本当の原因があることは多いのです。それは、からだを形作る筋骨格が、筋膜を通してすべてつながっているからです。
(4)軽く短い治療法
この治療の原則は「筋骨格系や頭蓋骨、内臓における機能とバランスの調整」です。
この考え方は、オステオパシーやカイロプラクティックに共通しますが、その治療法はこれまで踏襲されてきた多くの方法と異なる点があります。主な特徴として下記が挙げられます。
(1)骨を「ボキボキ」鳴らさない。きわめて軽い刺激なので痛くない
(2)悪い箇所だけ原因を探して治療する
(3)短時間で終了する(当治療院は、1回15分～20分を基本としています)
これらの特長は次の3つの理由から導かれます。
(1)関節を取り巻く筋肉やじん帯は、大きな力を入力しようとすると、逆に刺激を受け入れまいとして固くなって抵抗することが分かっています。したがって、小さく軽い刺激ほど、からだからの抵抗が少なく、治療効果も高まります。
(2)調整する場所はおよそ中枢に近い部位（背骨＝脊髄）が多いので、からだはその刺激を一時的な疲労として感知します。
調整する量を増やし、関係のない余計な刺激を与えると、刺激を与えた筋肉やじん帯などを含め、中枢から、からだ全体の負担を増大させ、回復を遅らせることになります。
(3)以上の理由から、治療は軽く１回に治療する量は少ない方がよいという原則が導かれます。
必要最小限の手当てをしたら、あとはからだが自然治癒力を発揮し、回復しようと自身に働きかけます。必要以上に揉んだり叩いたり、数多くの調整を行うと、かえって回復への足かせを増やす結果になります。
瞬間的に捻りや力を加える、いわゆる「スラスト・テクニック※」は用いません。
※スラスト・テクニック：衝撃力を利用した調整で、いわゆる「ボキボキ」と鳴らすやり方です。この方法を使用したテクニックにはそれなりの理由がありますが、当治療院では採用していません。また、「スラスト・テクニック」を否定しているわけではありません。
2.からだに対する考え方
(1)筋骨格系のバランスの重要性
成人では約200個の骨が互いに連結して体形をつくっています。
この治療は、体形をなす骨格、それを支える筋肉やじん帯がスムーズに働くことを目的とします。
なぜ、筋骨格系のバランスが大事なのでしょう？
からだを構造物として見た場合、前後・左右・上下にバランスが取れているのが理想です。からだ全体のバランスが崩れ、いわゆる捻れや傾きなどの歪みが起こると、特定の部位に負担がかかり、その影響はからだの弱い部位に症状として現われて来ます。
また、症状として現われていない場合でも、どこかに不調がある場合、それが筋骨格系のバランスの異状として現われることも少なくありません。
例えば、内臓を包む筋膜のバランスが崩れ、それが横隔膜等を中から引っ張るようになると、それと連動して、胸郭や脊椎の動きの異常として現れる場合があります。
あるいは、筋骨格系の機能障害が内臓周辺の筋膜の動きを制限し、臓器そのものは悪くないのに調子が悪く感じる場合もあります。
からだの外側と内側は、それぞれ勝手に活動しているのではなく、生命を維持するために関連しながら協調して働いているので、このように一か所の障害が思わぬ部位に影響を及ぼして、不調につながるのです。そして、からだ全体を一つのユニットとして考えた場合、筋骨格系の構造的で機能的なバランスは、からだに備わった大切な機能に大きな影響を与えます。
骨格を支える筋肉や筋膜、じん帯や腱などに過度な緊張・弛緩があると、からだ中を巡る神経や血管、リンパなどの働きにも制限が生じます。
(2)正常な筋骨格系で健康をつくる
神経の伝達機構の円滑な働きやホルモンの分泌、酸素や栄養素を含んだ血液の循環など、からだが活動するために繰り返されるスムーズなエネルギーの供給や、静脈やリンパ管の働きとされる乳酸などの代謝物質の排出。このような重要な生命活動が妨げられ、それが慢性的になると、日常の生活において余計な負担がかかったまま活動することになります。そうした状態が連続して積み重なると、何らかの病気や不調を引き起こす可能性が増えていくことになります。
筋骨格系のバランスが整っているかどうかは、このように人間のからだにとって重要な活動を正常に行うために欠かすことができないのです。それは、単に見た目の姿勢が悪いといった表面的なことだけではありません。
だからこそこの治療法の目的は、関節の可動域や筋肉の動きに不自然な制限や弛緩が起きていないかを調べ、それらが正常なバランスが保てるように調整することで、からだが本来持つ自己調整機能を取り戻すよう働きかけることです。
医学の一般的な見地からすると、関節や筋肉の動きのわずかな制限はそれほど問題にされません。医学では、骨折している、脱臼している、筋肉が断裂しているなど、明らかに一定以上の損傷を被っているのが分かって初めて、治療の対象になるのです。仮に何か症状があっても、検査をして特に問題となる範囲でなければ、積極的な治療の対象からは除外されます。
オステオパシーを基本とする当治療院の治療法は、痛みがある、どうも調子が悪いといった症状があるにも関わらず、通常の検査では特に問題が発見されないといった場合に、極めて効果を発揮する可能性のある治療法です。
3.治療のステップ
(1)治療開始から終了まで
簡単にいえば「からだ全体のバランスを調べて→正常でない部位を調整する」プロセスに基づいています。そして、治療はすべて手で行います。
1.からだのバランスの調整
からだの不調や異常の原因となっている部位を調整する際は、カイロプラクティックでの治療用に
開発された治療ベッドを使って行います。ストレス性の場合は、頭蓋骨の調整、仙骨の治療を行います。
調整は、2ミリ程度のわずかな落差を利用して行いますので、通常のカイロプラクティックよりも、はるかに軽い刺激で痛くありません。
それは、あまりに軽いために「もの足りない」と感じるかも知れません。しかし、からだの筋骨格を「調整→チェック」しながら進める治療は、それだけ微妙な感覚が求められるのです。
2.改善を確認して治療を終了
筋骨格の可動性やバランスを、手を通してチェックし、改善されたと判断した場合に終了となります。
もちろん、治療によって症状が改善されたとご自身が実感されれば、その時点で終了いただいて結構です。
(2)快復の過程と治療後の反応
1.さまざまな快復のタイプ
1度の治療ですっかり改善される方から、時間のかかる方まで、回復までの時間は人それぞれです。一般的には、悪い状態で過ごして来た期間が長い人ほど、回復に時間を要する場合が多いようです。また、年令や持って生まれた回復力の違いも影響します。
本来“からだは治りたがっている”のですが、急激な変化を望まないのもまた、からだが持つ一面です。つまり、悪ければそれなりに安定した状態として保とうとする性質も持っているのです。治療を受けてからは、よい状態と悪い状態を繰り返すことで、からだが全体的なバランスを取りながら快復していきます。
ある程度まで快復すると、からだがに関わりなく、症状としては気にならなくなります。ただ、このように安定するまでの時間には個人差があり、連続した定期的な治療が必要な場合があります。
2.治療後の反応
治療後の反応として、からだがだるくなったり、生あくびが出たり、痛みが増したりすることがあります。これは、悪いなりにバランスを取っていた各部が急に良い状態に戻されたたため、からだがついていかないことで起こる一時的な症状で、心配ありません。
(3)治療当日・治療後のご注意
1.治療当日のご注意
治療された日は、過度のアルコールの摂取は避けていただくのが理想です。
入浴は普段と同じで結構ですが、ぎっくり腰などの急な痛みの場合は、その方の状態を見てアドバイスをさせていただきます。
2.この治療の最大の狙いは歪みにくいからだをつくる「予防医学」
日常生活を送るなかで疲労が蓄積したり、不測の事態による肉体的・精神的ストレスや疾病は避けることができません。
しかし、ある程度の健康状態を保ち、病気や故障を引き起こす要因・条件を減らすことができれば、その確率はグッと下がります。また、無理をして痛めた場合でも、日常生活のちょっとした注意で、回復時間もまた短縮できるはずです。したがって、
痛くなくなった、楽になったという後でも定期的な検診・治療はお勧めします。
年齢・性別に関わらず、自分のからだのクセや弱点を自覚されている方はなおさらです。
「予防医学」と申し上げた理由は、自然治癒力の低下を防ぎ、さらに向上させることに尽きます。病気や故障につながる要因を事前に取り除くことができれば、それが最大の予防になります。当治療院の治療が、少しでも皆さまの健康のお役に立つことができれば幸いです。
「予防医学」を実現するためには、からだが本来持っている自己調整機能、つまり「自然治癒力」を取り戻すように働きかけます。そのために筋骨格系の動きや神経系の反応から、からだの状態を判断し、調整していきます。
腰や肩の痛み、凝りなどの治療がメインに捉えられがちですが、「4.対症療法ではなく原因を治療」で述べましたように、筋骨格は、頭のてっぺんからつま先まで、つながっていますので、基本的にはほとんどのからだの故障や病に効果があります(※)。
「病院での検査では特に異状は認められないが、症状がある」というときは、当治療院で対応できる場合が多いようです。しかし病気によっては適応できない場合もあります。
例えば腰痛であっても、重度の脊柱管狭窄症（マヒなどがあり、即座に手術が必要と判断された場合など）は専門外となります。ただ、病気の方はご相談ください。そのつど対応できるかどうかお答えいたします。
※特定疾患＝いわゆる原因不明の難病にかかって治療に来られている患者さんもいらっしゃいます。しかし、症状を和らげる手助けにはなりますが、病気そのものを治せる訳ではありません。